「てるてる法師 (現)」



「できたっ!」
さっきからなにやらせっせと工作していた博雅が顔を上げて言った。なんだ?と晴明は読んでいた本から目を上げた。
「ふんふふ〜ん♪」
ぱっと立ち上がると博雅は窓を開けて庇にそいつを引っ掛けて吊るした。
外はいつまでも降り続く長雨。
「てるてる坊主てる坊主〜♪っと。」
白いハンカチにティッシュをつめて作ったてるてる坊主がニコニコ顔で揺れている。
「可愛いだろ〜」
この笑顔がチャームポイントなんだ、と博雅は窓枠に背を預けて、ニイッと笑った。
「これで明日は晴れるな。」
「どうだかな。」
本に目を戻した晴明、顔も上げずにあっさり否定。
「どうだかって、晴れるに決まってるさ」
ぷっと頬を膨らませる博雅。
「せっかく作ったのにケチつけるなよ」
「そうか、今回は博雅の手作りか。なら、効くかもな」
「今回?」
博雅の顔がハテナ?となる。
「覚えてないか?前はあの男から下賜されただろうが」
「下賜…あっ!」
「思い出したか?」
テーブルに読んでいた本を放ると晴明はゆっくりと立ち上がった。
「そういえば、あの時の博雅は可愛かったな」
「ば…!何が可愛いものか!お、おお思い出したぞっ!」
遠い過去のあの夜が一気にフラッシュバックする。
「そいつはよかった。なら、あの時の続きとゆこうか」
窓枠に手を付いてあわあわ言う博雅をその中に囲い込む晴明。
紅い唇の端をわずかばかり上げて微笑む。
「続きって!どんだけ前だよっ!」
「なに、ついこの間さ。」
「この間のワケあるかっっ!…むがっ…」
ぎゃんぎゃんうるさい口は塞ぐに限る。

追い詰められた博雅の頭上で、今回は妖しと無関係のてるてる坊主がにっこり笑っていた。
雨を止ませることはできても、博雅の涙は止ませられるかどうか…?





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